憂鬱な日曜日 2024/02/29 Thu 憂鬱な日曜日 「いや゛ぁっ!!!」 突き刺すような声が冬の空気を震わせた。 「蒼さんっ!」 「いかないっ! いかないよ!!!」 伸ばされた青年の手を、幼子は振り払って駆け出した。 今日は教会の炊き出しの日。 子は主催元の教会の孤児で、青年はそこの牧師である。 炊き出しが行われる10時よりも前から会場には人が集まっており、教会関係者やボランティアの人々は準備で忙しそうだ。子もその手伝いをしなくてはならないはずだが、とてもそんな状態ではなさそうで。 子は教会の裏の空きビルの影に逃げ込んだ。 『にげてきちゃった。おにいちゃんガッカリした。でも、しらないひと、こわい…。でも』 うずくまり一人で悶々としていた。 1月の初旬。太陽が出ているとはいえ真冬の日陰となれば凍えるような寒さだ。子の頭は上手く回ってくれない。 『ごめんなさい、ごめんなさい、じょうずにできなくて。わるいぼくなんて、しんじゃえ』 どれ程の時間そうしていたのだろうか。爪が完全に青くなってしまった頃、ふっと自分にかかる影が濃くなった。 子は咄嗟に顔を上げて 「……………………」 こわばっていた筋肉が緩み、目頭から目尻にかけて涙がドバっと溢れる感覚が込み上げた。 「ここにいましたか、探しましたよ? 」 ホッとした表情の青年は 「さぁ、召し上がれ」 手元が見えないほど湯気が立つ豚汁を割り箸と一緒に子に手渡した。 「こんなに指先を冷やして……。可哀想に……寒かったでしょう?」 着ていたコートを脱ぎ、華奢な体を包みこむ。 コートからは爽やかながらも暖かみを感じる、甘い匂いがした。 〈〈前の話 次の話〉〉 ページTOP
「いや゛ぁっ!!!」
突き刺すような声が冬の空気を震わせた。
「蒼さんっ!」
「いかないっ! いかないよ!!!」
伸ばされた青年の手を、幼子は振り払って駆け出した。
今日は教会の炊き出しの日。
子は主催元の教会の孤児で、青年はそこの牧師である。
炊き出しが行われる10時よりも前から会場には人が集まっており、教会関係者やボランティアの人々は準備で忙しそうだ。子もその手伝いをしなくてはならないはずだが、とてもそんな状態ではなさそうで。
子は教会の裏の空きビルの影に逃げ込んだ。
『にげてきちゃった。おにいちゃんガッカリした。でも、しらないひと、こわい…。でも』
うずくまり一人で悶々としていた。
1月の初旬。太陽が出ているとはいえ真冬の日陰となれば凍えるような寒さだ。子の頭は上手く回ってくれない。
『ごめんなさい、ごめんなさい、じょうずにできなくて。わるいぼくなんて、しんじゃえ』
どれ程の時間そうしていたのだろうか。爪が完全に青くなってしまった頃、ふっと自分にかかる影が濃くなった。
子は咄嗟に顔を上げて
「……………………」
こわばっていた筋肉が緩み、目頭から目尻にかけて涙がドバっと溢れる感覚が込み上げた。
「ここにいましたか、探しましたよ? 」
ホッとした表情の青年は
「さぁ、召し上がれ」
手元が見えないほど湯気が立つ豚汁を割り箸と一緒に子に手渡した。
「こんなに指先を冷やして……。可哀想に……寒かったでしょう?」
着ていたコートを脱ぎ、華奢な体を包みこむ。
コートからは爽やかながらも暖かみを感じる、甘い匂いがした。
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